毒壺

本音。 世の中にこれまで生きて思ったことをここに記す。 重要な事から下らない愚痴まで。

今更ながら、「砂の器」は超おすすめ映画。ドラマ版はダメ、絶対(笑)

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前回ブログにてカルト映画「幻の湖」を大プッシュしたが結果ディスっちゃた格好にもなってしまったので橋本忍氏はちゃんとした(笑)大仕事もやってのけていることを記述しておきたい(本心から)

 

まず最初に伝えなければならないのは、ドラマ版は観ちゃダメ、絶対w

なぜならうすーいアメリカンどころか年を経るごとに心が一ミリも動かされない仕上がりになってしまってるから。この配役を見て欲しい。

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この今西刑事と犯人の和賀役が映画の核で、勿論役を演じるに足り得る名優(一部違うw)が名を連ねているが、やはり映画版で正解がでてしまっているのでこれ以上演りようがない、といったところか。

人間の厚み、重厚さは何故昔の役者(ミュージシャンなど芸術家全般だが)のが上か、というのは答えが出ている。戦争で死線を潜り抜けているからだ。

兵役だけでなく、民間人も空襲などで死と隣あわせになっていた。こんな経験すると命、人生とかきっと向き合っていると思う。そこから人間の厚みが出るのではないか。平和に暮らせるのは素晴らしいが、そこは今の人間には出せないだろう。

昨今の時代背景もあり、ハンセン氏病が伝染病であるという誤解を招く恐れもあることから原作に変更点があったり、俳優起因でなくつまらなくなる原因もあったりする。

古い映画なので、けっこう若い人は観ていないと思う。ストーリーは解説しないでおこう。

功績を讃えるため一部ネタバレに接する文章があるのでこれから観る方は観たあとで読んでネ。

 

橋本氏が素晴らしかったのは、原作の松本清張氏が仰った通り「原作を超えた」台本を執筆したこと。原作は未読だが、恐らく推理の部分に主眼が置かれ、そのまま映画化したら火サスか土ワイみたいなもので終わったと察せられる(笑)

原作には僅かに説明されている、病気が原因となって浮浪者にならざるをえなかった親子の旅を素晴らしいオーケストラの音楽に乗せるというアイディアをもって映像化させたことだろう。

親子が酷い目に遭う旅の経緯のシーン、ここで音楽のみにしてセリフなしにしたのもいい演出だった。セリフ無くったってどんな酷いことになっているかハッキリわかる映像だったし、何より素晴らしい音楽の邪魔になっただろう。

犯人自身が作曲し演奏する曲のタイトルが「宿命」

生き別れになってしまった子が、曲を演奏し宿命を回顧する中でしか親と再会できない、という発想は素晴らしすぎる。

個人的にだが、観てよかった、と思える映画は人間の生きざま、残酷な心、人として尊敬できる行動、など複雑な人間模様、人間ドラマを見せつけられたとき。

人間なんて善か悪か、なんて単純なもんじゃないからね。

この映画にはそれが十二分に提示されていた。

 

単なるミステリー映画のジャンルとしてではなく、人間ドラマとして描き切ったので後世に伝えられる映画になったのではないだろうか。